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ほいくえVoice

【vol.14 後編】一人の保育士としてどうありたいか

更新日:2021.8.16|2(2週間) / 298(累計)

しゅんさん
40代 保育歴17年目
小規模認可保育園 主任
 
しゅんさんの前回のインタビューはこちら
 
−男性保育士というと少数派ですよね。働きづらさを感じたことはありますか?
 
今の男性保育士の割合は約3%(※男女共同参画白書平成26年版より)だと言われています。自分が公立保育所の職員として採用されたとき、50年以上の歴史がある市ではあったのですが史上初、第一号の男性保育士でした。公立園というと若手から超ベテランまでまんべんなくいるのに、男性は自分ただひとり。物珍しがられたり、偏見の目で見られたりすることも。前例がない中で働く難しさを感じ、「専門性をもった⼀⼈の保育⼠として、子どもや保育に向き合っているのに…」と葛藤の⽇々でした。
 
−孤軍奮闘の新人時代だったのですね。その時支えになったものはどんなことでしたか?
 
⾃分は国家試験を受けて保育⼠になりました。勉強していた当時は「もし、保育士になれなかったら…」という不安の中で毎日を過ごしていました。何がなんでも保育⼠になるんだという強い思いが、その不安な日々を支えてくれました。
そうして、やっと保育⼠になれた時の喜びは言葉では言い表せないほどのものがありました。これで保育の道で⽣きていくことができる…そう思いました。
保育士になって働くなかで、辛い時や苦しい時もありました。それでもその時のことを思い出すと頑張ることができ、乗り越えることができました。あとは⼦どもたちの笑顔や「先⽣⼤好き」という⾔葉も⽀えになりました。
 
−後輩の男性保育士、また未来の男性保育士に向けて伝えたいことはありますか?
 
男性だから⼥性だからにとらわれないで、周りの職員とどう関わっていくか、⼀⼈の⼈間、⼀⼈の保育⼠として⾃分はどうありたいのか、という意識を持つことが⼀番⼤切だと思います。保育士を志した時に多くの⼥性の中で働くことは分かっていたことだし、それについて文句を言ったり嘆いたりしても仕⽅ない。
⼥性のなかで働くことは難しい、大変だ、と不平不満をこぼすより、「保育⼠として⾃分はどうありたいか」いう想いを持ちながら、子どもたちや保護者、周りの職員と向き合うようにすることが大切です。
そうしていると、ときには落ち込むことがあったとしても、なんとかやっていけるんじゃないかな、と思います。
 
−17年めのしゅんさんの言葉は説得力があって力強いですね。さらに若手保育士に向けても、アドバイスがあればお聞かせください。
 
偉そうなことを⾔える⾃分ではないのですが…。あえてアドバイスするなら、「分からないことを“分からない”と⾔うこと」です。
こんなこと聞いていいのかな、こんな風に思われたらどうしよう、と⾝動きが取れなくなる若い保育士をたくさん見てきました。やりたいことがあっても経験豊富な先輩と組むとなかなか⾔い出せないことも、ありがちです。
誰しも最初は分からなくて、できなくて当たり前。⼦どもたちも失敗しながら、いろいろなことに気付いて成⻑するじゃないですか。それは若い保育士も同じで、最初から完璧を目指さなくていいんです。
保育は⼀⼈ではできない仕事です。周りの職員と支え合い、時に議論しながら、子どもにとって何が大切なのかを考え続けていくことが必要です。
上⼿くいかない中でも、そんな⾃分から逃げずに向き合っていれば、周りもそれを見ていて助けてくれるし、認めてくれる。そうしたことの繰り返しと積み重ねで、少しずつ成長していくのだと思います。
 
−しゅんさんが若手のときは、そのような心がけだったのですか?
 
いえ、⾃分が若⼿のときは分からない、助けて、が素直に⾔えなかったんです。失敗を恐れて…「そんなことも知らないの?」と思われたくなくて。
それで必死に勉強したり、⾃費で研修に参加したりしていました。そうした日々のなかで得たものが、今の自分の保育の礎になっています。だから、迷い、悩んだ日々は今となっては無駄ではなかったと言えますが、当時は苦しくて⾟くて、誰かに助けて欲しいと思っていました。その経験があるからこそ、若い保育士に伝えたいです。
当時はできない⾃分が保育士として⼦どもと向き合うことへの申し訳なさのようなものを感じていたのですが、今思えばそんなこと感じなくてよかった。
⼦どもは「〇〇ができるからこの先⽣が好き」ではなくて、「⾃分のことを⼤切にしてくれるから、受け⽌めてくれるからこの先⽣が好き」、なんですよね。そこにはベテランも新⼈も関係ない。何かができる・できないではなく、⼦どもの⼀番の理解者でいようとするその⼼根が、保育⼠として自分を成⻑させてくれます。
 
【しゅんさん×保育のひとコマ】
仕事用の鞄です。中には仕事に関するファイルが4冊以上、保育の本が5冊以上入っています。おかげで鞄はかなりの重さに…。周りの職員からは「先生の鞄は重すぎて持てない!」といつも言われます。鞄はたっぷり量が入ることと耐久性重視!です。(しゅんさん)
 
しゅんさんの現在の目標は「子どもと職員と向き合える保育園を自分の手でつくること」。そのために今、さまざまな人に相談をしながら準備や勉強を進めているそうです。これまで孤独だったこと、辛いこと、苦しいこと、たくさんあったと想像しますが、全てを成長の糧に変えられてきたのだと思います。真っすぐな想いを柔らかな笑顔で応えてくださる姿が、とても好印象でした。しゅんさん、この度は貴重なお話をありがとうございました!
しゅんさんのnoteはこちら
 
(2021.5聞き手・編集:鏡味)
 
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