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ほいくえVoice

(特別号)【経営者Voice vol. 5】子どもがつなぐ信頼関係

更新日:2021.9.23|6(2週間) / 66(累計)

内田正志さん
40代 保育園経営者
 
−内田さん、まず初めに保育園経営に至った経緯を聞かせてください!
 
前職では若手社会人の教育に携わっていました。中には思うように成長できない方がいて、どうしたらよいのか悩んでいました。原因を探っていくと、それは勉強ができる・できないではなく、成長することに対してモチベーションを見出すことができない・自分はやればできると思えない・自分は必要な存在だと思えないなどの自己肯定感の不足ではないかという結論に至りました。そして、自己肯定感を身につけるためには、幼少時代の教育がとても重要であると考え、幼児教育に貢献したいという想いに至りました。本当は幼稚園を作りたかったのですが、一から作るのはとてもハードルが高かったことと、さらにその手前の年齢のお子さんの保育に携わりたいという思いが高まり、保育園を開園しました。
 
−念願叶って、来春には3−5歳の保育園の新設を控えているのですよね。内田さんは時折保育士として現場にも入っているとのこと。現場に入って気付くことはありますか?
 
ただ子どもと遊んでいるだけでしょ?と思う方もいると思いますが、実際には、保育は綿密な計画とスケジュール、そして細かな気配りに基づいて進んでいきます。私自身初めて現場に入った時には、想像以上の繊細さに驚きました。
 
−これまで関わってきたお子さんの中で、一番印象に残っているお子さんはいますか?
 
それを語りだすといっぱいありすぎて…これまでの園児のことは全員とても大切に覚えています。その中でも特に印象的だったのは、1歳半ばで入園したAくんです。Aくんは事情によりこれまでほとんど人と触れたことがなく、こちらが話しかけてもまったく反応してくれませんでした。加えて、お友だちに手を出したり、給食をひっくり返してしまったりというやんちゃな一面もありました。彼の保育について職員や時に専門家と何度も議論して、いろいろ試しましたが、半年ほど経っても光が見いだせない状況でした。そこで、根本的に何かを見落としていないか?と考えなおし、これまでの接し方をいったん忘れて、0からAくんの保育を見直そうと職員に伝えました。
 
−そのときの職員の皆さんの様子は、いかがでしたか?
 
「こんなに日々一生懸命やっているのに…」「Aくんのことを分かっていない」など、反発はありました。でも新たな方針で進めてしばらくして、Aくんに良い変化が少しずつ見られるようになりました。笑顔が出てきたり、職員を呼んで抱っこを求めたり、やんちゃな行動を思いとどまったり、と入園当初には見られなかった良い変化が見られるようになり、最終的には見違えるほど成長してくれました。その姿を改めて見たときに、Aくんの人生に少しだけ貢献することができたのかな、と感じました。
 
−施設責任者として指示をするとき、反発に遭うこともあるかと思います。その時に内田さんが心がけていることはありますか?
 
「現場のことを分かっていない」と言われないように、なるべく現場にいるようにしています。「この人が言うならそうなのかな」と思ってもらえるための関係づくりに、必要なことだと思っています。
 
−普段非常にお忙しいと思います。現場にいる、というのは具体的にどの程度、どんな風に関わっているのでしょう?
 
もちろん時間があるときは子どもたちと一緒に遊んだりしますが、事務所で作業している時間が多いです。大切なのは、作業中であっても子どもたちの様子や会話を常に意識し、子どもに求められた時にはしっかりと応対することで、子どもたちに認めてもらうことだと思っています。子どもたちが好きでいてくれるから、職員も信頼してくれている、尊重してくれる、というのはすごく感じます。
 
−子どもが信頼をつなぐハブ的存在ということですね、とてもよく分かります。最後に保育業界について、課題と希望をお聞かせください!
 
課題も山ほどありますが…「子ども中心に考えすぎている」ところでしょうか。「子ども中心」なのは当然なのですが、それが行き過ぎて保育者にしわ寄せがいっている保育園が多いと感じています。一生懸命保育をする保育者は本当に尊いと思いますし、皆さん尊敬しています。そんな保育者が、「子ども中心」の対応を求められすぎることによって、余裕がなくなって、顔面蒼白になっている状態はあってはならないと考えています。保育者が充実していないのに、子どもたちを充実させることはできないので、「子ども中心」の保育を行うためにも、職員がより働きやすく、楽しく、余裕を持てるための意見や提案は経営者として、引き続き積極的に考えていきたいです。そしてそれは経営者のさじ加減一つでいかようにもなると思っています。もちろん経営側の苦しさは十分理解していますが、保育者あっての保育園なので、充実した環境にしていってほしいと思います。
 
【内田正志さん×保育のひとコマ】
よくある出退勤登録システムなのですが、職員に楽しんでほしい&遊びを入れたいという思いで占い機能を追加しました。出勤登録ボタンを押すと、そのあとに今日の運勢が表示されるようになっています。職員たちが楽しんでくれているかは謎ですが…笑(内田正志さん)
 
経営者として、施設長として、また新しい保育園の準備で大変多忙な日々かと思いますが、他園の見学も積極的に行っているそうです。良いところをなるべく取り込み、働きやすく、楽しく余裕を持てる働き方を模索する姿勢がうかがえます。内田さん、この度は貴重なお話をありがとうございました!
 
(2021.9聞き手・編集:鏡味)
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