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(特別号)【経営者Voice vol. 8】教える力、伝える力を鍛えよう

更新日:2023.1.16|4(2週間) / 229(累計)

中田幸一郎さん
60代 保育園運営会社 代表取締役
 
―中田幸一郎さん(以下中田さん)は東京都内を中心に、10の認可保育園・小規模認可保育園を運営していらっしゃいます。まずは会社を立ち上げたきっかけからお伺いしたいです。
 
この会社の設立前に携わっていた会社が保育事業を売却し、採算が取れない保育園を閉園しようとしていたのです。閉園予定の保育園にはもちろん職員、園児の家庭が通っていました。いきなり閉園は困るだろう、なんとかできないかと考え、職員や家庭も含めてみんなで出資して、保育園を買い取って運営するための会社を立ち上げました。10年ほど前の出来事です。
 
―それから保育園の展開を進めながら、そのノウハウを活かして新規開園のコンサルティングもされていたのですよね。保育園の開園に関して、最近感じる変化はありますか?
 
新しく保育園を作ることがすごく難しくなっています。以前は「想いがあれば個人でも作れる」ようなところもありました。今では個人ではだめ、法人でなければいけない、しかも黒字企業であること、保育事業の実績がないといけない、など。参入要件はどんどん厳しいものになっています。
自分の保育園を持ちたいなら、既存の保育園を買い取るしか方法はないのでは?と思うものの高額すぎて、とても「想いがあれば個人でも持てる」状況ではありません。保育園も溢れてきました。
 
―保育園が増えた中で、今後はどうなっていくと見通していますか?
 
保育を一つの産業として見るなら、飽和の先に集約化の流れはある程度あると思います。大型スーパーマーケットができて、その近所の商店街が苦しくなる現象のような。ただ保育は小売とは違う、特殊な業界です。保育の中身を見てしっかり選ぼうとする、多少のお金は厭わないご家庭も結構ありますよね。特徴があれば小さくても生き残る方法はいくらでもありそうです。特殊といえば、公立認可が一番、社福が次によくて、株式は微妙、認可外はもっと微妙みたいな変なヒエラルキー意識も打破したい。
 
―そういう差を感じることがありますか?
 
養成校の教職員の方と話していて、株式会社運営の保育園は安定しないと思っている、下に見ているような雰囲気をひしひしと感じることも。わけわかんないなぁと思いますよね。
 
―中田さんは保育士資格をお持ちなのですよね。
 
職員ともっと話せるようにとか、保育現場に手伝いに行けるようにとか考えて、50歳を過ぎて独学で保育士資格を取りました。資格を取ってみて思いますが、保育士の地位を上げるには保育士資格のハードルをもっと上げるとか、更新制度を作るとかしないとダメですよね。
 
―保育士資格をもっと難しい資格にしないといけない、ということでしょうか。
 
たまに保育現場にも入りますけど、資格を持っているだけで出来る仕事じゃ全然ないですよ。
 
―保育の仕事の難しさは、例えばどんなところでしょう?
 
保育のスキルを高めようとすると、スキルって一体なんだろう?すごく難しいことなのではないか?と考えます。保育園や学校は指針が改定されたり、その時良しとされたことがいつからか悪とされたり、検証なしに新しいことが始まることだってあるじゃないですか。一生懸命学ぼうとする姿勢は必要ですが、その一方でいい加減なもんだよな〜正解は一つじゃないんだよな〜くらいの気持ちもないと、苦しくなることもあるのではないかと思います。
自分の学生時代は部活動で校庭を何周も走って、ウサギ跳びをして、水は極力飲むなと言われていましたが、ウサギ跳びは良くないもの!水分補給は重要!が今の一般的な考え方ですよね(笑)
 
―水は極力飲むな、はもう一切聞かないですね。よく聴かれる「保育に正解はない」という言葉を連想しながら聴いていました。保育士に意識してほしいことはありますか?
 
コミュニケーション能力、特に「教える力」は大事だと思っています。教えられたいと思っているけど、教えるのはすごく苦手、という保育士が多い印象です。年数や経験関わらず「この園児はこんな様子です」とか、そんな日常的なことも含めて、断定して物を伝えるのが苦手という感じでしょうか。断定して嫌われるのが怖い、間違えるのが怖い、ぶつかるのが怖い、という気持ちがあるのかもしれません。頭で一生懸命考えていて、子どものために頑張りたい気持ちもある。それはとても素晴らしいことなので一歩踏み出して、「じゃあどうするんだ!?」を誰かと一緒に考えて、時にぶつかって、行動してほしいと思いますね。
 
【中田幸一郎さん×保育のひとコマ】
本社にて、中田さんの後ろには保育士証が飾られています。
 
中田さん、経営者目線での貴重なお話をありがとうございました!教える力、断定を恐れない心がけをしたいと改めて思いました。
 
(2022.11 聞き手・編集:鏡味)
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