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(特別号)【教員Voice vol. 4】子どもの前で「どうやって生きているか」を見せる

更新日:2023.3.6|2(2週間) / 187(累計)

宮代翔太さん
20代 養成校教員
 
―宮代翔太さん(以下宮代さん)は公立保育園で5年間保育士として勤務したのち、3年前から養成校で保育学生の指導にあたられています。宮代さんが養成校で勤務するきっかけはどんなことだったのでしょうか?
 
「本気で保育の環境を変えたい」と思ったことです。そして色々考えた結果、市政に挑戦するという判断に至りました。そして公務員のままだと自由に働くことができないと考えていたところで、母校からオファーを受け教員として働いています。
 
―そうだったのですね。「本気で保育の環境を変えたい」とは、いつから考えていたのでしょうか?
 
保育士として頑張ろうと思って、学生時代は意欲的に学んでいました(成績優秀者として選出されたそうです。素晴らしいですね!)。養成校を卒業していざ公立保育園で働いてみたら、サービス残業も持ち帰り仕事も当たり前で「え、こんな感じなんだ!?」とものすごくびっくりしたんですね。同じ状況でも同僚は「残業も持ち帰りも仕方ないよね〜保育業界では当たり前なんじゃないの?」と諦めている。なんだかモヤモヤするなぁと思ったときに、一人でふらりとヒッチハイクに行ったんですよ。
 
―ヒッチハイクですか!
 
そこで出会った人との会話が印象に残っています。同僚は諦めているけれど、自分は働く環境を変えたいという話をしたら、「課題意識を持っている人が変えないと、何も変わらないよ」と。そこから「どうやって変える?」の自問自答が始まり、覚悟を決めて市政に挑戦しようと。保育に関わらず、子育ての環境を変えていきたいと考えています。
 
―初対面の人との会話が、宮代さんのキャリアを変えたのですね。いまは一年生の指導にあたっているとのことですが、どんなことを話していますか?
 
入学時から実習の話はよくしています。実習が大変という学生は多いですし、送り出す前に伝えることも多く、教員としても準備が結構大変です。冬の実習に向けて秋から準備しても、間に合っていないという体感もあります。
 
―具体的にはどのようなことをしているのでしょうか?
 
「日誌が大変」という声をよく耳にしますが、見たことや感じたこと、振り返って考えたことを表すことに苦労している印象です。ですので入学してから、授業やイベント、学校生活の中で行われる自分の考えを記述するプリント(感想、考察、振り返り、反省など)は必ず最後の行まで埋めることを徹底しています。また一年生から日直制度を設けて、前に立つ経験はもちろん、手遊びなどの実技のアウトプットの場を設けています。そうして学校生活の日常から表現することに慣れる、積み重ねになるよう努めています。
 
―保育経験が浅い保育学生や、新卒保育士が現場に入るときに必要なことはどのようなことだと思いますか?
 
「学ぶ姿勢を表すこと」はとても大事ですよね。アドバイスや指導を受けた時に理解して、言動を改善しようとできるかどうか。言われた通りにすぐ出来る必要はないと思っていますが、そういう姿勢があるかどうかは見られていますよね。頭ごなしに「納得できません」とか「違うと思います」と反発してしまうとか、何も変化が見られないのは、よろしくないと思います。
もう一つ学生によく話すのが「人格を磨く努力をしよう」ということです。保育士とは子どもの前で「どうやって生きているか?」を見せる職業だ、という話をします。子どもに「元気よく挨拶しよう」「人に優しくしよう」と話すなら、当然自分もそうでないといけません。言うのは簡単だけど、皆それを普段からちゃんとできているの?と。保育の専門性を身に着けることも大切ですが、人間力を磨き続けることはもっと大切なことだと思っています。
 
―教員として保育の現場を見る機会も多いと思います。これからどんな保育園が選ばれると思いますか?
 
難しいですよね。保護者ウケのいい保育園が選ばれていく懸念も抱いています。英語をやっているとか、スポーツや〇〇式を取り入れているとか。子どもがビシっと座れているとか、みんな揃って何かできているとか、見えやすいことはそういうことだったりするんですよね。
本当は保育の専門性や本質を、保育者が自信を持って伝えられる、そこから保護者が判断する形が理想ですが、見えづらいなぁとも正直思っています。
 
―「この保育園微妙だな〜」と思うところもありますか?
 
実習巡回で「自分が働くのも嫌だし、我が子を預けるのも嫌だ」と思う保育園を見ることもありますよ。職員に挨拶しても反応が返ってこない、元気がない、明らかに高圧的な保育をしているとか。そういう保育園は選ばれないでしょうね。
先ほどの話とも重なりますが、人が大事になってくることは確かです。「あの人がいるから」選ばれる、という面もより強くなってくるのではないでしょうか。
 
宮代さん、インタビューにご協力いただきありがとうございました!「楽しいことを楽しめるのは当たり前。いかにして楽しくないことも楽しめる工夫をするのが技術であり、それがポリシー」という言葉も印象的でした。お仕事に育児に、また目標達成に向けお忙しいと思いますが、終始熱意を感じる時間でした。
 
【宮代翔太さん×保育のひとコマ】
これは授業で行われたお店屋さんごっこでの一コマです。お客さんとして参加させていただき、大はしゃぎでお買い物を楽しみました。
ちなみに保育士時代からよく保護者の方から「翔太先生が一番楽しそうでしたね」とイベント毎に言われていました。「楽しい」は最強の学びです。
それを見せるのも大事な仕事だと思っています。(宮代さん)
 
宮代翔太さんのHPはこちら
 
(2022.12 聞き手・編集:鏡味)
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