坂東愛子さん
40代 保育歴4年目
企業主導型保育園 園長
―インタビュー前編では、職場環境を根本から改善するための取り組みを伺いました。今回は保育の中身についても伺いたいと思います。ジェンダー教育やアクティブ・ラーニングを取り入れられているとのことですね。
ジェンダー教育については、現代は女性も男性同様にキャリアを積める時代であり、幼少期から男女の垣根をなくしたいと思っています。世の中、おもちゃ程性別で分かれているものはないんじゃないかと。そして俗に言う「男の子のあそび」の方が、脳を使うものが多い印象です。園では固定概念をなくしてあそびを取り入れています。男の子が一番好みそうなあそびを敢えて女の子にさせることもあります。また、男の子だってエプロンを付けてままごとをしたらいいですし、パパ役じゃなくてもいいのです。人生の土台作りのこの時期にこそ、ジェンダーフリーの概念を植え付ける必要性を感じています。
―まさに、多様性尊重の根っこの部分ですね。アクティブ・ラーニングについてもお聞かせいただけますか。
アクティブ・ラーニングは、日常のあそびや生活の中に教育的土台を作っていくものです。頭・体・コミュニケーションの3分野に分けて子どもの発達を捉え、ねらい・活動・展開という流れであそびを計画立てて提供していきます。特別な教具を使うわけではなく、これまで何気なくやっていたあそびをより実のあるものにしていくというものです。
―普段のあそびの中に、子ども自らが学ぶ環境を整えるということですね。
そのためには、まず子どもの発達をしっかり学び計画していくことが重要です。そしていかに子どもが興味を持てるよう導入し、集中して学びを深めさせられるか。更に、できたことをいかに次へと展開させていくか。そのような働きかけの元、子どもたちは喜んで自ら学ぶようになります。同時にその姿は保護者にとっても保育士にとっても何より嬉しいことなのです。
―1つひとつのあそびに計画を立てていくのは大変な作業にも感じますがいかがでしょうか。
これも前編の時間管理の話になりますが、一つずつその都度計画を立てると大変なので、ある程度「このあそびはこういうものだ」という計画表を作っておきます。それを見ながら工夫して日々の保育に落とし込んでいくのです。
―やはり、大枠の大切さは何事にも共通ですね。
はい、何度も言うようですが、保育士が大変なのはその都度考えるからです。時間、あそび、書類の書き方、何を取ってもそうだと思います。状況は変わるかもしれませんが、何事も大枠をもたないと、つねに判断や計画などに追われ疲れてしまいます。本当は毎日保育を楽しみたいじゃないですか。回すのが精いっぱいで一日終わるなんて、なんと勿体ない。いかに頭をクリアにして、ワクワクすることを考える余力を残すかということが大事だと思っています。
坂東さんのお話に終始一貫していたのは、大枠・ルールの大切さ。保育にも職員育成にも重要な共通項は、まず何か特別なものよりも、身近なもの・根本的なものを見直し整えること。アクティブに動くために、まずは丁寧に枠組みをすることなのですね。職員については、いい人に入職してほしいとは思うけども、初めから向上心もスキルも溢れている人などおらず、それらは育成されていくものだ、と捉えてらっしゃいます。こういう保育がしたいと思え、それを実現できるだけの知識やキャリアを積める環境・仕組みを用意したいとのことです。保育を専門職に留めず総合職として、慣例にとらわれず改革していきたいという熱い想いを感じたインタビューでした。最後に、「保育士さんが楽しく働けるためのスキルアップをお手伝いしたいです!いつでもお悩み相談くださいね」と心強いお言葉を頂きました。坂東愛子さん、この度はありがとうございました。
〈坂東さん×保育のひとコマ〉
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園を象徴する絵、園名の由来にもなっている「森」です。さまざまな個性が輝き、
のびのびと過ごす豊かな森をイメージして、 開園当時有名な画家さんに描いて頂いたとのこと。 いまでは園の象徴となっています。
(2021.9 聞き手・編集:土屋)