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ほいくえVoice

(特別号)【経営者Voice vol. 4】自分自身の価値を高めよう

更新日:2021.8.26|1(2週間) / 342(累計)

野上美希さん
40代 保育園運営社会福祉法人 統括
 
−野上さんが運営する保育園では、職員の休暇や研修の時間確保に努める、残業や持ち帰り仕事はなし、配置基準を独自に見直すなど、保育士の働きやすさを強く追求している印象です。
 
心のゆとりがないと、良い保育はできないと考えています。残業がある、休みたいときに休めない、話し合う時間がしっかり取れない、受けたい研修を十分に受けられないと、疲れた雰囲気が子どもたちに影響します。過去にそんな職員の姿を目の当たりにして感じるところがあり、今では働きやすい環境づくりのためにできることは、意識的に考えるようにしていますね。
 
−野上さんから見て、一緒に働きたい、魅力的な保育士はどのような人でしょうか?
 
熱い人が好きですね。子どものために頑張りたい、そういった熱意が感じられる人であれば多少スキルが足りなくても採用したいと思っています。働きやすさをPRしているので「ラクしたい」という動機で応募してくる方も中にはいますが、そこはすごく慎重に考えています。熱意がある、志の高い保育士にいかに私たちのことを知ってもらうか、いかに行きたいと思ってもらうか 、力を入れているところです。全職員が「子どものことを第一に考えたい」と思って同じ方向に向かっている状態が理想です。
 
−そこまでこだわるのは何故でしょう?
 
経営目線でいうと、「保育の質を上げる」とは「職員の質を上げる」ことだと考えています。「ラクしたい」「怪我しないように一日見ていればいい」「だって給料変わらないし」「頑張っても意味あるの?」などと考える職員が仮に一人でも職場にいると、そちら側に引っ張られてしまう職員も出てきます。職員のプライベートを犠牲にせず、保育の質を高めたい。園児の入園が重要な業界なので、お給料をいきなり高くすることは現実的に難しい。であれば、工夫のしどころは働く時間をどれだけ少なくできるか、いかに残業や持ち帰りをなくすか、時間通りきっちり終えるかだと思います。それが結果的に、自分自身の時間単価と価値を高めることに繋がる。
 
−職員のプライベートを犠牲にせず、というところが素晴らしい配慮だと思います。
 
異業界から保育業界に来て感じた違和感の一つは、サービス残業が当たり前等、保育士の時間を奪っている、という意識が経営側に低いことです。保育士が好きで残っているんでしょ?と考える経営者も、後でやればいい、残業や持ち帰りをして落ち着いた時にゆっくり仕事しようと考える、そのほうがラクだと思う保育者も少なくない。経営者も保育士も、就業時間内に仕事を終わらせる工夫を考えていかないといけません。
 
−保育園経営の視点で、課題だと思うことは他にありますか?
 
保育士を育てる概念が薄いとも感じています。実習先での経験が辛くてめげてしまう保育学生の話も多く聞きますが、「学生の出来を判断する実習」ではなく「学生を適切に育てる実習」になるといい。あなたここが出来ていないのよとか、ここがダメなのよとか言われて、学生がいきなりできるわけないじゃないですか(笑)そんなことを言って、業界から貴重な人材をリリースしてしまうことがいかに罪深いことか、少子化で、学生も少なくなっていく中で、貴重な保育学生を育てていかないといけない現状を、理解しないといけませんよね。
 
−終始「保育士を大切にしたい」という熱い想い、圧倒的な行動力を感じるお話でした。最後に保育士や保育学生にメッセージをお願いします!
 
保育士は未来を作っていく仕事。今は資格さえ取れば食いっぱぐれない仕事、誰でもできる仕事だと思われているかもしれませんが、私は業界全体の地位を向上させたいと強く思っています。CA(キャビンアテンダント)のように目指したい人がたくさんいて、選ばれた人がなれる仕事になるといいなぁとも。
保育士の方には「自分は専門性のある人間だ」という意識を持って、もっともっとアピールしてほしい。そうすれば「保育士さんってすごい」「ただの子育てではない」が伝わる世界が、見えてくるのかなと。乳幼児期の自己肯定感が、人としての土台になるということの認知はだいぶ広がってきましたよね。今度はその時期に深く関わる職業、つまり保育士という職業がさらに認知されて、人の土台構築に貢献する職業だと広く伝われば、本当の意味で日本の未来は大きく変化していくと思っています!
 
【野上美希さん×保育のひとコマ】
先生の手作りおもちゃの掃除機です。色々と試行錯誤しながら、ヘッドが動く匠の技。
子ども達のために作ってあげたい!という想いに寄り添い、先生の創造力や感性を存分に活かした作品です。(野上美希さん)
 
保育の仕事は「豊かな人生を送れる、心が豊かになれる素晴らしい仕事。」だと語ってくださった野上さん。常に人を想う、大切なものを守る、柔らかな表情と口調に癒やされながら、圧倒的な行動力や信念の強さも感じるインタビューでした。野上さん、この度は貴重なお話をありがとうございました!
 
野上美希さんのTwitterはこちら
(2021.8 聞き手・編集:鏡味)
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