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ほいくえVoice

(特別号)【園長Voice vol.2前編】自分で考え行動する子

更新日:2021.7.26|3(2週間) / 259(累計)

もりもりさん

保育歴 16年目  30代

企業主導型保育園 園長

 

―自然豊かな場所に3年前ご自身で保育園を立ち上げられたもりもりさん。その経緯も含め、お話を伺いたいと思います。自然の中でのあそび、楽しそうですね。

 

そうですね、山登りや川遊びなどの機会も多く取り入れており、自然から学ぶことはたくさんあります。例えば川遊び。入っていいのはここまでなどの線引きを敢えてせず、子どもが自分でさじ加減を考えながら遊べるようにします。すると、子どもは自分で怖いと思えばそこまでにしますし、泳げる友だちが更に進んでいったら勇気を出して一緒に行ってみようなどとします。ああしなさい、こうしましょうの言葉はなく、自然を介して子どもが主体的に考え、経験し、学ぶのです。もちろん、それを支えるためには下調べと事前準備は入念に行います。

 

―自分で経験し学べる環境を整えられているのですね。

 

私が保育の中で最も大切にしているのは、子どもが自分で経験し学ぶこと、そして、自分で考え行動することです。そもそも人間は“安全でいたい”という欲求が備わっているので、必要以上に守ってあげる必要はないと考えています。

 

―なるほど。

 

子どものケンカも同じことが言えます。「~でしょ!ごめんねは?」などと間に入る。ガミガミ言って謝らせれば、それでおしまい。ありがちなケンカの対応ですが、それこそが日本の教育の課題の一つかなと思います。それって一見解決したようで、実は子どもが自分で感じて考える機会を奪ってしまっているのですよね。友だちを叩いてしまった、ひどい言葉を言ってしまった、そうした本人には、そうするだけの理由があった。でもしてしまったことへの罪悪感もきっとある。そんな時、気持ちを整理する時間が必要です。大人でもありますよね。ちょっと一人で考えたい、そっとしておいてほしいという時。子どもも同じで、それを大人の都合で奪ってはいけない。奪われ続けると、自分で考えなくていいやと思うようになってしまいます。なので私はある程度なら手を出そうがどうしようが静観するようにしています。それで子どもたちなりに折り合いをつけるならそれで良し。どうにもならない時にだけ少し間に入ります。対応は本当にケースバイケースですが、できるだけ落ち着いた環境で、一旦他事へ軽く気を逸らせるなど解決を急がずに関わります。気持ちが落ち着いてきたところで、自然に「ごめんね」が言えることもあるのです。「ごめんね」が言えることがゴールではなく、子どもたち一人ひとりの心が動く時間、そして考える時間を保証する。そうすると子どもたちは自ら学ぶのだと思っています。

 

―あくまで見守る。そして必要に応じ個別に対応しながら待つ。職員自身の気持ちの余裕や、職員間の協力も不可欠ですね。

 

そうですね。そうやって最終的に目指すのは、保育士の介入をできる限り必要としない保育です。もちろんおむつ替えや食事を自分でできない子へ必要なケアはありますし、困った時にはいつでも助けになります。でも子ども達には自分で考え行動できるようになってほしい。保育園で過保護に守られて育ち、その時はそれでよくても、その子には卒園してからの長い人生があるわけです。先を見据えなければならない。その子に必要なものは、全面的な保護でなく、自分で考え行動する力です。

 

―自分で考え行動することの大切さ、非常に共感いたします。

 

そしてケースバイケースのケンカ対応に関しては、職員会議でその都度出し合い、皆で共有しながら考えるようにしています。紙面で回覧できるものはわざわざ議題にしない。本当に身になる、明日の保育に繋がる会議を心掛けています。

 

―会議のあり方も大変参考になります。

 

あと、うちは一斉保育でなく自由保育なのですが、「自由」と「放任」の違いははっきりさせたいところです。保育を「暮らし」の中で考えていて、その中に学びがあると思っています。食べること一つ取ってもそうです。畑でナスを育て収穫した。次にどうしたら食べられるか。切ったり炒めたりする。味付けはどうしたらおいしくなるのか?...などです。また、ナスをどう切ったら5人平等に分けられるか、そこで学べるのは数の概念です。他にも、土の湿り具合によって季節を学ぶなどもそうです。暮らしの中で「自然と学べるように、意図的に環境づくりをする」。他にも、その子が“昨夜何時に寝て、今朝何時に起きたか”、“
どのような家族構成か”、“好きな食べ物やあそびは何か”、“今日機嫌が良いか”等、詳しく知りながら見守っている。それが「自由保育」であり、“ただ子どもは自由に遊ばせておけばいいの”というのが「放任」であり、全く違うものだと思っています。

 

―環境に身を置くことで自然と「したく」なる保育なのですね。

 

はい。そして、物だけでなく人も大きな環境と考えています。そのため、0~5歳の異年齢保育をしています。自分より少し大きい友達がしていることに憧れ、自分も背伸びしてやってみようと思う。大人に言われてやるよりも、子ども同士で学ぶ方が効果絶大です。また、一般的に同学年でも月齢差でずっと劣等感を感じてしまう子、逆にずっとお手本でいなければとプレッシャーを感じてしまう子がいる。それが異年齢保育ならば、どの生まれ月でも関係なく年上年下がいて、時にリーダーに、時に憧れる側に、様々な立場を経験できるのがいいところかと思います。

 

―ひとつの大きな家族のようですね。

 

本当にそうですね。そうそう、自由保育ということですが、以前こんな出来事がありました。ある年長児が卒園を控え、「バイトしたい」と言い出したんです。

 

―アルバイトですか!また面白い発想ですね。その一言を拾いあげたわけですね。

 

お金を生むためにこの年の子に任せられることってあるのかしら…と皆で考えました。赤ちゃんの世話をしてもらうのも違う気がするし…結果、「消し忘れの電気を消す」という仕事を任せることにしました。そうして1か月で150円が生まれたのです。そのお金をバイト代として渡し、好きなお菓子を一緒に買いに行きました。

 

―子どものつぶやきをそれで終わらせず、拾って一緒に形にしていく。そうすることで、自分の考えって、行動すればちゃんと形にできるんだと学べるのですね。

 

 

子どもを子ども扱いせず、あくまで一人の人間としてとらえるのが大原則とおっしゃるもりもりさん。その際、バイスティックの7原則を参考にして接しておられるとのことです。(職員トイレに貼られているとのこと)

インタビュー後編では、自園立ち上げの経緯や、これから立ち上げを考えている方へのメッセージ、また、職員や保護者との関係について伺います。

 

〈もりもりさん×保育〉

のどかな自然の中に位置する木造りの園舎です。

 

(2021.6 聞き手・編集:土屋)

 

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