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(特別号)【教員Voice vol. 5】保育業務は思いきった引き算を

更新日:2023.7.24|1(2週間) / 138(累計)

新沼英明さん
40代 養成校教員
 
―新沼英明さん(以下新沼さん)は教員になられる前は社会福祉士として、さまざまなご家庭の相談援助をされていたのですよね。
 
はい、ソーシャルワーカーを志して大学で学んだ後、公務員として勤務しました。本当にさまざまなご家庭に介入する中で子ども家庭福祉への想いが強まり、働きながら大学院に進学、さらにその時に保育士資格も取得しました。
 
―「子ども家庭福祉への想い」は気になります。
 
自分が育ってきた環境とは違う、これまでの価値観では想像できない家庭がそこにはあり、介入していくと見えてくるものがたくさんありました。
その時特に感じたのは「児童福祉は一筋縄ではいかない」「福祉の仕事は心が元気でないと務まらない」ということですね。学生にもそのようなお話や「当事者本人にはなれないけれど、当事者のように理解できる保育者になってほしい」ということもよく伝えています。
 
―大学院修了後は養成校で研究や学生指導にあたられているのですね。
 
17年前から教育に携わっていて、いま勤務する短大が3校めになります。8年ほど前から少子化の影響が危惧され、入学志願者減少の兆候はありましたが、特にここ3年ほどは急激に減っていますね。今年度は本学も厳しい状況にあります。
 
―当然経営的には厳しいですよね。
 
学校としてPRを工夫したら解決するのでは?という意見もありますが、私はそうとは捉えていません。県内どこも同じような現象が起こっていて、閉校や募集停止の話もよく聞かれるようになりました。そもそも保育士を目指す学生の母数が著しく減っている、なのでどこも厳しい局面に入っていると考えます。そしてコロナ禍の影響で、この状況はしばらく続くと見ています。
 
―コロナ禍と保育士不足と関係があるのでしょうか?
 
中学生の職業体験や保育園でのボランティア経験など、コロナ禍の影響で保育に触れる機会が激減してしまいました。私は受験生を面接するときに「なぜ本学を志望したのか?」の前に、必ず「なぜ保育士になりたいと思ったのか?」を聞いています。きっかけとしてダントツで多いのが「中学生のときに経験した職業体験」なんですね。職業体験やボランティアなどで保育士のやりがいを体感して、心を決める学生さんは非常に多いのです。
 
―たしかに「ほいくえVoice」のインタビューでも職業体験の話はよく聞きます。保育現場を体験する場は保育の魅力を伝える、また育成の場としてとても重要ですね。
 
中学生や高校生向けに職業体験の場を提供する、未来の保育士を積極的に受け入れていくことも、保育園に期待したいことです。それと働く環境の整備、改善も急がれることと考えています。
 
―働く環境として、保育園はどうすべき、どうなるべきでしょう?
 
大きく2つあると思っています。まずは「業務の引き算」に努めることです。保育園や保育士に求める業務量が増え、コロナ禍も含め足し算が続いた結果、いま保育園や保育士は疲弊していると感じます。
100のキャパに140とか160とかの業務を詰め込むのではなく、思いきって引き算をしましょう。行事が多くて佶屈としている保育園よりも、余裕を持って子どもと向き合える保育園のほうが保育士にもご家庭にも理解され選ばれるはずです。今こそ保育士でなければできない仕事に集中、専念できる環境作りが重要です。現在保育士の有効求人倍率は3倍近くありますから、そういった保育園作りをしないといい人はすぐ転職してしまうでしょう。きれいな壁面装飾よりも、保育者が心身元気な保育園のほうが魅力的ですよね。
 
―足し算するなら引き算もセットで、とても分かりやすいお話でした。
 
もう一つは「地域の保育機能を維持すること」です。満員近くでないと経営できない仕組みは、保活するご家庭にとっても事業者にとってもデメリットです。定員割れで経営が立ち行かないので閉園しますとしたら、子どもが増えたらまた建て直すのですか、という話で。それでは皆が困ってしまいます。10人の定員だとしたら7人8人程度でも経営を維持できる形であれば、保護者も安心して育児ができます。そのような仕組みを国は考えてほしいと思います。
 
新沼さん、インタビューにご協力くださりありがとうございました!それぞれの立場に立った見解で、終始まさに「当事者のように共感し、理解する」姿勢が感じられる時間でした。
 
【新沼英明さん×保育のひとコマ】
写真はベトナムの孤児院での一コマです。
本学ではベトナムでの「海外ボランティア研修」を行っており、コロナ前は毎年100人近くの学生が参加していました。
そこの子どもたちに、将来の夢は?と聞くと「日本に行って働きたい」と答えてくれました。日本は夢の国なんですね。
これから益々保育園も多国籍化しますので、しっかり支えることができるように、今後もあらゆる角度から保育政策の研究をしていきたいと思います。 (新沼英明さん)
 
新沼英明さんのTwitterブログはこちら。
 
(2023.7 聞き手・編集:鏡味)
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