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ほいくえVoice

(特別号)【教員Voice vol. 6】ゆとりをもって考えること

更新日:2023.9.25|1(2週間) / 93(累計)

泉秀生さん
40代 養成校教員
 
―泉秀生さん(以下泉さん)が福祉に関わりたいと思ったきっかけをお伺いしたいです。
 
物心ついた頃から「人と関わるのが楽しい」「人が好き」という想いが強かったように思います。保育士の母親は電車で赤ちゃんを見かけると、口元から変わった音を出して興味をひいたり、ニコニコあやしたりしていたんです。「かわいいですね」「何ヶ月ですか?」などと、その赤ちゃんのお母さんと打ち解けている様子を見て、「子どもって可愛いなぁ」とも思っていました。それと父親の仕事の都合で国内外含め私は転校を多く経験しているのですが、「友達が好き」という想いも強かったです。
 
―転校して新しい環境に入るのは緊張も大きそうです。
 
海外でのインターナショナルスクールも日本人学校も経験しましたし、帰国して友達が一人もいない中での転校経験もありました。先生の転校生への態度もさまざまでしたけど、そんなに気にならなかったですね。今振り返ると自己肯定感が高い子どもだったのかもしれません。
 
―自己肯定感ってどう高めたらいいのか?は保育の現場でもよく聞かれることですよね。
 
自己肯定感ってよくわからないですよね。自己効力感も似た意味の言葉として使いますが、「自分はできるんだ」という自信は大事でしょうね。そのために必要なのは成功体験の積み重ねだと思います。成功体験には壁がつきものですが、その壁に対していかに考えすぎず挑戦できるかどうかが大切になっていて、それは幼児期がぴったりだと思います。小学校とは異なり優劣がつかず、失敗を気にせず、楽しみながらトライができますから。
 
―幼児期の自己肯定感を育むのに、保育者の関わり方もとても重要ということですね。
 
それぞれの子どもに合った「壁」を用意できるかがポイントだと思います。例えば鉄棒を積極的にやってみたい子はやったらいいのですが、鉄棒怖いと言っている子には無理にさせるのではなく、鉄棒遊びから始めてみるとか、低い棒を用いる、棒じゃなくても木登りしてみるとか、さまざまなアプローチがありますよね。手の届くところの壁を用意してあげて、遊びを通して、楽しんだ結果、気付いたら力がついている、というのが理想です。
 
―鉄棒の例えはすごくわかりやすいです。なんでもやってみたい子、引っ込み思案な子、慎重な子、さまざまいますもんね。
泉さんは大学で保育学生の方々に講義をしていると思うのですが、学生さんによく伝えていることはどんなことでしょう?
 
「いろんな引き出しを持ちましょう」ということでしょうか。大学では社会的養護と子ども家庭支援論を主に講義しています。3歳になる息子がいますので、息子の様子や私自身の悩みをケーススタディの材料にすることもあります。「3歳の子どもが保育園に行きたくないと泣いています。皆さんが保護者だったらどうしますか?」などです。
 
―いろんな答えが出そうですね。
 
オンライン授業でチャット欄に書いてもらうと、本当にいろんな意見が出てきますね。子どもにどう言葉がけをするのか、どんな立ちふるまいがいいのか、実際にはケースバイケースですがいろんな引き出しを知っておくこと、考えておくことはとても有効だと思います。
 
―泉さんは養成校教員としてもいち保護者としても保育園に関わっていて、これからこうなってほしい!と思うことはありますか?
 
子どもの最善の利益とは何かを、ゆとりを持ってしっかり考えてほしいなと思います。保育とはなんたるか、は時代と共に変化しています。巡視に行くとまだまだ鼓笛に命をかけている園、嫌がる子どもも含めてドッジボールを厳しく教え込む園などさまざまあり、保育観を整えていくことの必要性を痛感します。いま養成校で学ぶ保育は「子ども一人ひとりにあった保育」ですから。
また子どもの生活実態やその調査結果、発達観点から「幼児期の午睡は本当に必要なのか」といった議論もあるのです。「午睡がないと連絡帳が書けない」という現場の声も聞こえてきますが、「子どもにとって何が最善なのか」「子ども目線なのか」を考える姿勢が今後さらに求められていくと感じています。
 
泉さん、貴重なお話をありがとうございました!泉さんの研究内容もとても興味深く、調査結果も交えたお話はとても楽しく参考になりました。
 
【泉秀生さん×保育のひとコマ】
専門家としてテレビに出演させていただいたのは、一研究者としても一父親としても、最高に幸せな気分でした。(泉秀生さん)
 
泉秀生さんのX(旧Twitter)はこちら
 
(2023.8 聞き手・編集:鏡味)
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