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【vol.8前編】どんな状況にも、柔軟に。だからこそ折れない心

更新日:2021.6.1|3(2週間) / 308(累計)

mamさん

1978年生まれ 11年目

私立認可園 主任

3児の母

 

―事務職、子育てを経て、国家試験を受けて資格を取られたのですね。保育士になられてからは、色々な種類の園を経験されてきたとのこと。いかがでしたか?

 

初めに入った病院内保育所は衝撃的なところでしたね…じっとしていると「何で仕事しないの!」と言われたり、教えてくれるはくれるけど、「やって当たり前でしょ」などと言われたり、怖~い職場でした。子どもの噛みつき対応には、その噛んだ子に話をするのではなく、突然マスクを付けてベビーベッドに入れちゃう、みたいな、到底保護者に見せられないような対応でした。ショックでしたね…楽しい保育の時間ももちろんありましたが、そこは3か月ほどで辞めてしまいました。

 

―突然マスク⁉衝撃的ですね…!期待して入った初めの園がそれって、ショックが大きいですよね。

 

保育園ってこんなに厳しい所なのかと衝撃を受けましたね。でも次に勤めた小さな託児所は家庭的でゆったりしていて、その次の公立保育園(臨時職員)ではしっかり保育というものを教えてもらった感じで、どちらも良かったです。ただ今後のことを考えて正規職員になろうと思い、今の園に入りました。

 

―そして今年度から主任になられたのですね。

 

今の園の立ち上げから7年関わってきて主任になりました。今回、園長、主任、副主任と、上の先生がゴッソリ変わってしまい、新米園長新米主任の手探り状態で4月がスタートしました。しかも園長は違う畑出身の人なんです。

 

―なんと!では実質保育者の中では主任のmamさんがトップということですね。

 

そうなんです、それまでただの一保育士だったのに急に…。私、実は保育のことはまだあまり自信がないんです。学校を出たのでなく国家試験で資格を取ったということもありますし、私よりずっとうまく保育できる人がいると思い、まだまだ葛藤があります。どちらかと言うと人間関係を作る方を期待され主任に選ばれたんだと思います。

 

―職場内の人間関係が大変だったのですか?

 

そうですね…園児のことより、大人同士の問題の方が難しい気がします。立ち上げから7年経ち、だいぶ落ち着いて来てはいるかな...

 

―当時の大変だったエピソード、具体的に教えていただけますか?

 

立ち上げ時は、色々な保育観を持った人が集まっているので、そのクラス、その先生によってやり方がバラバラでした。なので、フリーで色々なクラスに入る先生は特に大変だったと思います。保育所保育指針が改訂(2018年度)された際、勉強してそれに沿った保育を考えていこうと思ったのですが、ベテランの中には自分の保育観を曲げられない方も多かったですね。子ども達はビシッとかっこよく揃ってお話を聞けるのが良い!とある意味“軍隊”みたいな一斉保育を変えられずにいる方も。私は乳児クラス担当が多かったこともあり、もっと甘えていいよというスタンスでやっていました。そのギャップは大きかったですね。今の若い先生は学生時代新しい指針で学ばれているので、比較的子どもの主体性を大切にすることは念頭にあるようで良かったです。ただ、若手がそこを重視することで、クラスにまとまりがないからしっかりしてと先輩保育士に言われてしまうことがあります。そう言われると彼女たちは委縮してしまい、しっかりルールを守らせなきゃと厳しくする方への思いが強くなっていってしまうんですよね。私からしたら、まとまりがないというより子ども達がのびのびしているという言い方の方がいいと思うのですが…

 

―そういった状況にmamさんはどのように応じていたのですか。

 

若い先生が先輩に言われたことを、あれは違うよねと否定することはしません。相手を否定してもしょうがないと私は思うので。あなたはどうしたいの?と聞き出していったり、あなたの考えは間違ってないよなどと私なりにフォローしたりとしていました。色々な価値観・保育観の方がいるので、そのすりよせが難しいところです。

 

―先生方の間に入って立ち回られていたのですね。

 

そうですね。私はあまり第一線に立つタイプじゃなくて、どちらかというと後ろでコソコソと動く人なんです。主任になっても未だにそうで、あまり頼りになるタイプじゃなくて。ただフォローしているだけで、具体的にアドバイスとかもあまりできないんです。それでもみんなが頑張ってくれているので、職員に感謝しながら毎日やっています。

 

―今は落ち着いてきたとのことですが。

 

ベテランの方々がどんどん辞めていき、新卒で入った子が多く残るなど、メンバーが一新したことは大きかったと思います。今は園内研修を重ねながら、園全体で保育観が徐々に固まりつつあるなと感じています。あとは職員一人ひとりがもう少しゆとりを持てれば対話する時間も生まれより意思疎通が図れるんじゃないかと思っています。そのゆとり、余裕を生み出すのが今の課題です。

 

―先ほどおっしゃっていた子どもの主体性や多様性を認めていくという保育について、大規模園だと特に、保育をスムーズに回していくことと子ども一人ひとりの気持ちに寄り添うこととで、ジレンマもあると思うんです。一人のお子さんに関わっていたら他の子達は待ちぼうけになってしまうとか。その点、何か工夫されていることってありますか。

 

そこは正直難しいところですよね。理想ばかりも言っていられず、一人ひとりに全て認めていたら手に負えない状態になりますよね。全部が全部できないと思うんですけど、この時間は認めてあげようとかまずは部分的にでもいいんじゃないかな。子どもの主体性の認め方について、先生それぞれの考えがあるから押し付けはできないけれど、色んな事例を探しながらみんなで考える機会を作っていこうと思っています。

 

 

自信がないとおっしゃいながらも、いつも後輩への感謝と気遣いを忘れず、何事にも柔軟に対応してきたmamさん。そんなmamさんの姿から、上に立つ者に必要なことって何だろうと改めて考えさせられます。

インタビュー後編では、“子育ての失敗”から見出した理想の保育士像、そして保育士の悪しき習慣を打破し、働きやすさを得るための心意気を伺います。お楽しみに!
 

(2021.4.18 聞き手・編集:土屋)

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