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ほいくえVoice

【vol. 14前編】未来を育てること

更新日:2021.8.16|1(2週間) / 325(累計)

しゅんさん
40代 保育歴17年目
小規模認可保育園 主任
 
−早速ですが、しゅんさんが保育士になったのはどのようなきっかけだったのでしょう?
 
もとは全く違う分野を専攻する大学生でした。将来やりたいことのために進学しましたが、中に入ってみるとこれじゃないのかな、別の道で生きたほうがいいのかなと思うことがあって。ある意味「挫折」です。それが2回生のときで、残りの学生生活でいろんなアルバイトをしよう、社会経験をしようとしていた時に出会ったのが学童保育でした。「子どもと関わるっていいな」と思えたことがきっかけです。
 
−子どもと関わることの、どのような点が魅力的だったのでしょう?
 
「⾃分の代わりはどこにもいない。お⾦だけじゃないやりがいがある。」と感じた点です。大学生の時に学童保育と⺟⼦⽣活⽀援施設で働く経験をして、保育園に行き着きました。卒業後に働きながら国家試験を受けて保育士資格を取得。同時に公務員試験を受けて、公⽴保育所に就職しました。
 
−子どもと関わる仕事の中でも、保育園で感じるやりがいはどんなところなのでしょう?
 
ちょっと大げさですが(照)、保育をすることは「未来を育てること」だと思っています。今を見ながら、将来をつくっていく子どものことを見ている。先のことを想像しながら、未来に向かって伸びていく子どもと関われることにやりがいを感じます。
 
−子どもは未来そのもの、元気も希望ももらえる存在ですよね。非常に共感します。しゅんさんは公立保育所での勤務を経て、3年前に小規模認可園に転園されました。その時のことをお聞かせください。
 
保育士になって7年目くらいで気になりだしたことが、年齢が上がるにつれて、「できないから◯◯しない」「どうせ⾃分は□□だから」と、“やってみよう”と思えず、やる前から諦めてしまったり、他人と過度に比べ意識しすぎてしまう子どもの姿。
自己肯定感が低く、無条件に“⾃分のことが好きだ”と思えない子どもたちの姿を目の当たりにした時、そうした姿につながる要因はどこにあるのか…と考えるようになりました。
そして0〜2歳の時期に子どもにどのような言葉をかけてかかわっていくか、が重要になるのではないかという結論に⾄りました。
例えば、⼦どもが衣服の着脱をする時に「上手!」「できた!」といった言葉かけをつい保育者も保護者もしがちです。褒める・認めることは⼤切なことです。
しかし、そうした結果についての言葉ばかりをかけられて育った⼦どもは、初めて何かをする場面や、“出来ないかもしれない”ことに出会った時に、それらを「それでもやってみよう」と思えなくなる。そうした場面を保育の中で幾度となく目にしてきました。だから、自分はできる・できないではなく、その間にある『過程』を言葉にして伝えることで「その子のしようとしていること」を認めていこうと考え、そのようにかかわるようにしてきました。
「今履いているんだね!」「もうすぐ足が出てくるかな」など。「たとえできなくても、やろうとしていること」を認めることが、その⼦がその⼦であることを認めることにつながると考えるからです。そうした保育者のまなざしや言葉かけがあれば、「できなくてもやってみよう」という⼼を育て、その積み重ねが子どもの自尊感情にもつながっていくことを、保育の中で感じるようになりました。そうした保育をし続けるために、14年働いた公立保育所を退職し、0~2歳児の⼩規模保育園に転職することを決意しました。
 
−公立保育所では、現場トップとして主任を務められていたのですよね。その決断に迷いはなかったのでしょうか?
 
いえ、簡単な選択ではなかったです。このまま公立保育所で経験を積んでいたら、その先は園長。安定したキャリアではありますよね。一方で、今ここで決めないと辞め時がわからなくなるとも思いましたし、自分がどう生きていくべきなのか、子どものために何ができるのか、非常に悩みました。その時よぎったのは、もし自分の身に何かがあって保育の現場で働けなくなったら、いまここで決断しないと一生後悔するのではないか、ということ。そんなことを考え、公立保育所から小規模保育園に転職することにしました。
 
【しゅんさん×保育のひとコマ】
仕事のことを考えたい時、何かしなければならない仕事がある時にはカフェに行きます。家だと集中できないことがあるので…。
仕事をするうえでも、リラックスするうえでも、ある意味自分にとってなくてはならない場所です。(しゅんさん)
 
 
しゅんさんの「子どもにとって」「子どものために」という想いがとても伝わるインタビューでした。「いつも子どものために、どういう保育をするかを考えることができる職員集団が、良い保育園だと思う」という話も。仲良くするために集まるわけでも、馴れ合うために集まるわけでもありません。話し合ったり笑い合ったり、時には喧々諤々したり。いまでも主任として厳しいことを発言するときは苦しい、悩まない日はないと言います。けれどいつも「子どもにとってどうなのか?」という問いがあるから頑張れる、とのお話でした。子どもと職員の成長に寄り添いながら、主任としての職務を全うする責任感の強さ。しゅんさんの芯の強さ、優しさ、たしかな想いがあるからこそ前に進めるのですね。
次回のインタビューでは「男性保育士として思うこと」をお届けします。お楽しみに!
しゅんさんのnoteはこちら
 
(2021.5聞き手・編集:鏡味)
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