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ほいくえVoice

【vol. 38後編】循環ある保育の仕事

更新日:2022.8.15|1(2週間) / 169(累計)

まなみさん
30代 保育士歴7年目
企業主導型保育勤務
     
まなみさんのインタビュー前編はこちら
 
―大学院で発達心理学を専攻されていたまなみさんが、保育士になろうと思われたきっかけをお伺いしたいです。
 
大学院では見立てやごっこ遊びの研究をしていました。研究活動の一環で、幼稚園児とあそびを創っていくワークショップに携わりました。その時に「子どもと関わる仕事って循環がある仕事」だと感じて。保育士資格試験を受けて、保育士になりました。
 
―「循環がある仕事」とは?
 
保育をすると毎日子どもが反応してくれる、受け取った反応をもとに日々振り返って考え、それをまた保育に還元することができます。研究活動をしていた当時はそんなにすぐに反応が見られる、何かが返ってくることがなかったのでとても魅力に感じて、保育の実践者になってみたいと思いました。
 
―研究者としてのキャリアがあるまなみさんから見て、保育のいいところってどんなところでしょうか?
 
いろいろあってなんと答えようか悩みますね。すごく健康的な仕事だなと感じます。四季や天候を感じて、子どもの個性や感性を感じて、自分なりの個性や感性をも反映しやすい仕事だと思います。こんなに人間らしさが詰まった魅力的な職業ってなかなかないと思うので、保育者の感性や考え方がもっともっと現場で発揮されたらいいのに、と惜しくも思います。
 
―心も身体も頭も使う仕事、マルチな分大変なこともありますが、保育の大きな魅力とも言えそうです。印象に残っているお子さんのエピソードはありますか?
 
前の職場での話になりますが自己主張が強くて、大きな声で騒ぐ、走り回ることも多かった1歳児のAくんです。戸外活動から保育園に帰ろうとすると「いやだ!いやだ!」と言ったり走り回ったり、なかなか帰ることができません。Aくんが興奮すると周りも落ち着かなくなるというので「Aくん、落ち着いて!落ち着いて!」「もうだめ!」と担任の先生はいつも無理やり、大きな声でなだめることを最優先していました。
ある日もそんな感じで保育園に帰ってきて、上着を脱がせようとするとまたすごく嫌がって。Aくんの様子をじっと見ると、どうやら自分で上着を脱ぎたそうです。「じゃあやってみよう」と言って、時間がかかってもAくんが一人で脱げるように見守ってみました。すると最後は落ち着いて、ニコッと笑ってくれました。言葉にならなくても明確な意思があること、保育士としてそれを見取れる観点を持つことの大切さを体感することができた出来事でした。
 
―Aくんもまなみさんに気付いてもらえて、嬉しかったでしょうね。現在2歳になるお子さんのお母さんでもあるまなみさんですが、保育士としての経験が役立っていることはありますか?
 
その子をよく見ること、ですね。子どもの様子や反応は意識しないとよく見ることができない、というのは保育の現場で学んだことで、育児でも意識しています。わが子だとなおさら「こうなってほしい」という願いが膨れ上がりすぎてしまうことがあります。わが子と言えど別人格の一人の人間。「こういう子なのね」と距離を持って子どもの個性を面白がるよう心がけています。
 
 
―ご家庭でも振り返りの時間は大事にされていますか?
 
そうですね、夫ともよく話すようにしています。大変だったことや嬉しかったことはちょっとしたことでもなるべく話して夫婦で感じたことを伝え合って、笑い合えるといいですよね。保育も育児も誰かと一緒に、が大切だと思います。
 
まなみさん、後編もインタビューにご協力いただきありがとうございました!今後の展望を聞くと「いろいろ悩んでいますが、保育者向けの研修を作ることにも興味がある」というお話でした。保育士として勤務する職場とは別に、保育士向けの発信を行う団体の一員になられたのだとか。保育園勤務以外にご自身で会を主催して、また新たなチャレンジをされて、とてもエネルギッシュなお母さんだと思いました。今後のご活躍を楽しみにしています。
 
【まなみさん×保育のひとコマ】
通勤中に開きかけの綿毛を発見。保育園で水に差しておくと昼には綿毛がまぁるく開き、子どもたちと観察しました。(まなみさん)
 
まなみさん主催のお茶会ブログTwitterはこちら。
 
(2022.6 聞き手・編集:鏡味)
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