menu
ほいくえVoice

【vol. 34後編】保育は見つめ方が9割

更新日:2022.6.6|2(2週間) / 303(累計)

猫月だんくるおすてうすさん
40代 保育士歴16年目
公立認可保育施設勤務
     
猫月だんくるおすてうすさんのインタビュー前編はこちら
 
前編で「子どもは子どもたちの中で育つ」というお話が出ました。そういった中での保育者の役割はどう考えていますか?
 
子どもの環境設定については「あそび場だけをつくる」ことを意識しています。こういう遊び方をしなさい、みんな絶対遊んでなどとは思わないように、言わないようにしています。いまの子どもに必要なこと、経験してほしいことってなんだろう?と考えて、フィールドを作ります。目的は設定する、でも手段はいろいろあるはず。子どもは、自分に必要な遊びを、自分で見つけます。子どもたちが「やりたい!」と自発的に取り組める、夢中で楽しめるものを工夫するのが保育者の腕の見せどころだと思います。
 
―例えば「雨の日の室内あそび」でいうと、実践例はありますか?
 
雨だと困る…という保育者の声も聞きますよね。屋外でしたかったことができなくなった、室内にそのまま外の遊びをスライドできないし…と。まずは子どもたちに何を経験させたかった?を軸に置いて整理すると「思いきり身体を動かすこと」だったとします。であれば、例えば机をトンネルに見立てて、椅子を壁に並べて一本橋にして、サーキットをやってみようと。
 
―楽しそうですね!!その時意識することはありますか?
 
「今日は特別ね!」とまず伝えます。そしてテーブルの裏を見せて「危ないところ、あるかな?」と。そうすると2歳児でも考えて気付くんですよね。「キャスター留めに指を挟んだら危ない」とか「頭をぶつけたら痛い」とか。知らせるのではなく自ら気付いてもらうのがポイントです。そうすれば別の日やご家庭でテーブルにもぐり込むことはないです。言葉がけも保育者が気を配るべき、大切な環境設定の一つだと思っています。遊び方でよくあるのが「はーい!スタートはここです。並んで順番にやろうね。」というもの。スタートを決めてしまうと、待つことに飽きてトラブルになったり、つまらなくなったりしてしまう。自分は向きだけ合わせてどこから始めてもいいよ、とします。子どもの遊ぶ様子を見つめて、飽きてきたら「ちょっと難しくするね」と子どもの向上心をくすぐりつつ、椅子の間隔を変えてみるとか、他の動作でやってみせるとか、二の手三の手と子どもの様子からアレンジしていきます。
 
―「子どもを見つめる」というのがキーワードだと感じました。
 
「保育は見つめ方が9割」だと思っています。子どもたちの様子を見て環境設定することもそうですが、年長児だけど「ちょっと抱っこされたい」「でも恥ずかしい」に気付けるかどうか、とか。一人ひとりの様子を保護者に伝えられるようになるためにも。
 
―保護者支援がしたい、という起点から保育士になられた猫月だんくるおすてうすさんらしい。
 
見本を置かずにこいのぼり製作をしたことがあります。絵が得意な子どもは画用紙にクレヨンで描いたり、ハサミが使いたい子どもは切り貼りして立体的な工作を始める子どもがいたり、友だちの作品からオマージュしたり。必要なものは持ってくるから言ってねーと、子どもたちを見つめるのが自分の役回りです。そうすると様々な形のこいのぼりができあがります。保護者は全員が同じ制作をするものだと思っていますから「これはなんですか?」って聞くんです。「Aちゃんは、実際のこいのぼりを見て扇形に描いたんですよ〜」といった、子どもの表情や行動や関わりなど、ナラティブを伝えられるかどうか。保護者が我が子の成長を実感するためにも、見つめるって大事だと思います。
 
―猫月だんくるおすてうすさん自身も、保育の仕事を楽しんでいる様子が伺えます。
 
実は保育が楽しいと思えるようになったのは、10年前くらいからです。それまでは楽しいことがほとんどなくて、地獄だとか辞めたいとか、園長に「仕事に来たくないです」と伝えたこともあります(笑)
 
―えぇー今の様子からすると意外!!
 
その時担任を組んだ師匠の存在が大きいですね。自分の保育を見て早々に「君は保育の基本を教わってこなかったね」と言い当てられました。「今日からあなたのこと、実習生だと思って扱うから」と。
 
―それはショックではなかったですか?
 
むしろ、そうそうそう!やっとわかってくれた!って感じで。連絡帳も清書許可が出るまで鉛筆書き、お散歩も一番うしろで。きつかったですけど、毎日フィードバックをくれてすごくよく見てくれたんです。「今日あなたはこういう保育がしたかったんじゃない?そのためには〇〇が必要だよね」と適切なアドバイスが有り難かった。あの一年がなかったら、保育士を続けていないと思います。そしてその師匠は定年間際の大ベテランなのに「これまでやったことないけど、今度これを保育に取り入れてみたくて」と学ぶ姿勢とチャレンジ精神が健在。保育者として必要な要素をたくさん見せてくれました。
 
猫月だんくるおすてうすさん、インタビューにご協力いただきありがとうございました!お師匠さんも、猫月だんくるおすてうすさんのことを見つめてくださっていたのかなと感じました。保育に限らずアドラー心理学、行動心理学、発達心理学、ビジネス書など、多岐にわたって学びを深めながら保育への実践に活かす姿勢がとても印象的でした。
 
【猫月だんくるおすてうすさん×保育のひとコマ】
保育の素材は、子どもたちと遊びながら作ります。「あ、このお話知ってる」「これ、○○真似したでしょ?」裏方の仕事を、子どもに見せることで、「保育は仕事」を知ってもらいたいです。あと、「大人も遊びに真剣なんだぞ!」も見せたいと思ってます。“ウサギン・ボルト”は、会心の出来(笑)(猫月だんくるおすてうすさん)
 
猫月だんくるおすてうすさんのブログTwitterはこちら。
 
(2022.4 聞き手・編集:鏡味)
  • この記事をシェア:

その他のほいくえVoice