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ほいくえVoice

【vol.9前編】現場のリアルを伝えたい

更新日:2021.6.1|1(2週間) / 349(累計)

みーさん

30代 保育士歴11年目

株式会社の認可保育園勤務

 

―保育の現場について知ってほしいことがあるとのこと。ぜひお聞かせください。

 

世の中、保育士ってただ子ども達と遊んでいるだけじゃないかと思っている人がまだ少なくない気がします。それだったらお給料もこれくらいでいいよねみたいに思われているんじゃないかな。でも、保育士に求められることって量も質もどんどん増えてきているんです。書類もしかり、保護者対応もしかり。それによりサービス残業ありきになり、給料も低いんじゃ、やってられません。いい先生がどんどん辞めていってしまうのをずっと見てきました。そういった現状を少しでも多くの人に知ってほしいなと思っています。

 

―志し高く保育士になられた方がその夢を諦めていってしまうって、残念でしかないです…おっしゃる通り、まずは現状を知ってもらうところからですね。みーさんのお勤めの園で、一番問題だなと思うところはどんなところでしょう。

 

人が足らないです。細かく言うと人数的(配置基準)にはアウトじゃないんですが、その中身の問題です。責任を取ってもらえないパートさんとペアで実質一人でバタバタ動き回っていたり、当番に入れる保育士や書類を書ける担任保育士が少なく、みんな手いっぱいだったりするんです。それなのに、そこにお給料の差はなく、頑張ってもそれに見合ったものが返ってこないんです。

 

―そうなのですね…

 

子ども達のために頑張る、成長を見られるのが嬉しい、それがやりがいでずっと頑張ってきました。でも自分もだんだん色々なことが分かってきて、見合った待遇もなく、この10年間いったい何をやっていたんだろうとやりがい搾取とさえ感じてしまうことがあります。

 

―いくらやりがいのあることでも、ボランティアでやっているわけではなく、相応の見返りは必要ですよね...そんな思いの中毎日通われているのですね。

 

正直行きたくないと思うことはありますが、自分に何かしら理由をつけて向かっています。今日はこいのぼり製作をしなきゃいけないからとか、ペアの先生がお休みだからとか。自分が休んだしわ寄せって結局子ども達に行ってしまいますしね。

 

―責任感が向かわせているのですね。人間関係は良好ですか?

 

色々ありますね…前の園長先生の話ですが、新卒の子に厳しめの言葉を浴びせて軽い鬱っぽくさせてしまうなど、色々やり方に疑問を感じることがありました。今の園長は前の人と比べ話を聞いてくれるし保育に入ってくれるし、その点は嬉しいです。ただ、新年度の行事決めの際、いきなりこれまでなかった行事を増やし、決定の形で提示されてしまったんです。現場はただでさえいっぱいいっぱいなのに、何もわかってくれてないなと思いました。転勤してきたばかりの園長なので現状を知らないということもあるんでしょうが、みんなの反感を買ってしまいましたね…

 

―今の園長先生に対し、みーさんは思いを伝えられたのですか。

 

はい、みんな毎日の保育で手いっぱいで、それに加え行事を増やされたら嫌になって辞めてしまう職員もいるのではないか。私はこのメンバーで今年度乗り切りたい。だから行事を増やすにしても、もう少し様子を見ながらにしてほしい。そう伝えました。

 

―それは受け入れてもらえましたか。

 

どうかな。園長先生も認証園から認可園の園長になれたのが嬉しく、私がこの園を良くするんだと頑張ってくれているんだと思うんです。それが少し空回り気味になってしまっているというか…

 

―なるほど…お気持ちは分かりますが、現場の声を聞かずして進めることではないですよね。職場は他には若手の先生が多いのですか?

 

後輩は入っても3年とかで辞めていってしまうことが多く、あまりいないんですよね。その代わり、いるのは超ベテランだったりだとか。

 

―そうなのですね!

 

そういう方々の手を借りないとやっていけないのかと思ってしまいますね。その方もこれまでは担任としてクラスを持っていたんですけど、少しずつ問題が出てきてしまい…走る子どもについていけない、子どもを抱っこしたまま転んでしまう、子どもの名前を覚えていない、など…。そのため今年からフリーという形でクラスに入っています。そうなると書類などは全員分担任が1人で書いて、保育だけそのフリーの方が加わる感じです。

 

―なんと…

 

しかも0歳児クラス担任は育休明けなんです。仕事の山とまだ慣れない子育てに、手一杯です。1歳児クラスは、子ども10人に対し4年目の職員とこれまた超ベテランさんの2人体制です。10人分の書類は全部4年目の職員一人で書いているんです。いやぁ~~大変ですよ。

 

―園長先生はその大変さを分かっていらっしゃるのですよね。

 

もちろん。社長に、人が足らないと直に言いに行ってくれているようです。でも会社からは、人が入らないんだからしょうがないねと言われてしまうようで。園長も雇われ園長だからどうしようもないですね。

 

―主任の先生からクラスへのフォローはないのですか?

 

その主任の先生なんですが...正直、下の職員からしたら何も仕事をしてないんじゃないかと思ってしまう程なんです。

 

―と言いますと..?

 

例えば、0歳児クラスって入園してリズムが整うまでは落ち着かず、誰かしら泣いているような状態なんですよね。でもそういう時、全くフォローに来てくれないんです。それで何をしていたかというと、職員室でママ友とLINEしているらしいんです。他にも、昼寝中の休憩は子どもの泣き声で慌てて戻ったり連絡帳があったりでまともに時間が取れないことが多いんですが、その間も主任は職員室でコーヒーを飲みながらスマホをいじっていて。こっちはバタバタ動き回っているというのにそれを全く気にせずにです。正直、主任が1か月でやっていることってシフトを作ることくらいじゃないかなと思ってしまいます...

 

―あわわわわ...

 

もし自分が主任だったら、私抱っこしてここ見ているから先生ご飯行っておいでよ、とか、大変なことがあったらヘルプで入るからいつでも言ってね、とか伝えたいですね。

 

―主任の先生を反面教師にし、そう思われているのですね。園長先生からも主任の先生への指導はないのでしょうか?

 

ちょっと複雑で、転勤前の園では今の主任が園長で、今の園長がパートだったんです。園長は元々後輩の立場だったから、今も主任には強く言えなくて。表面上は良い関係でやっているようなのでまぁいいのですが、園長としてはやりにくいでしょうね。

 

―そんなぁ…

 

なんかもう、“地獄”ですよね~(笑)

 

―えーーーー(泣)

 

 

たくさんのショッキングなお話を聞かせていただきました。これも現状の一つなのですね。そのことを1人でも多くの方に知ってもらい、問題として考えてほしい。そのような思いで語ってくださったみーさんです。

インタビュー後編では、このような状況でみーさんが保育を続けてきた原動力とは。そしてこれからの思いについて伺います。

 

(2021.4.21 聞き手・編集:土屋)

 

 

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