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(特別号)【園長Voice vol.3前編】悪しき習慣「そういうものだよね」を絶つ

更新日:2021.10.11|4(2週間) / 476(累計)

坂東愛子さん

40代 保育歴4年目

企業主導型保育園 園長

 

―他業種から保育界に入り、保育園を創られた坂東さん。そのきっかけを教えていただけますか。

 

前職を辞め専業主婦で子どもを育てており、陥ったのが育児ノイローゼでした。当時は社会から孤立した思いで、相当辛かったです。しかしその時ふと、同様に悩む方は少なくない、そういった方を助けたいという思いが芽生えたのです。そして一念発起し立ち上げたのがママの支援団体で、それが今に至る出発点です。一方、その際に我が子を預けた保育園にて、職員の一斉退職が起こりました。その時初めて、保育士ってこんなに大変な仕事なのかと知りました。自分の辛かった育児経験から、子どもが健全に育つには親が健全でないといけないと感じておりましたが、同じく第2の家庭となる保育園の保育士も健全である必要性を強く感じました。そこで、職場環境を良くすることで子どもたちに良い保育が還元される、そんな保育園を立ち上げようと決めたのです。

 

―辛かったご自身の経験をバネに、「ならば自分が変えよう」と思われたわけですね。他業種の視点があるからこそ見える課題がありそうです。

 

そうですね。例えば人数配置の問題がよく言われますが、ただ人数だけ増えればいいわけではないですよね。根本的に、「働く仕組み」ができていないのが問題だと思っています。園全体と保育士個人双方の、保育面以外の社会的スキルアップが必要だと思うのです。それは、情報共有の仕組み、時間管理、メンタルコントロールやマネジメントまで、多岐に渡ります。最もチームプレーが求められる職場であるにも関わらず、実態はきちんとしたルールのない、ワンマンが合わさったような仕組みになりがちです。その中で個々がそれぞれ悩んで奮闘しているから大変なのです。

 

―なるほど...

 

離職の最大の原因は人間関係かと思いますが、その人間関係って、ただ人と人の好き嫌いではないですよね。友だちではないのですから。結局、仕事が上手く嚙み合うかどうかで、関係の良い悪いができてしまうのです。一番摩擦が起きやすい原因は情報共有。それを円滑に行うソフト面の整備が急務です。他にも、時間管理や書類作成等、何を取っても明確なルールがなく、個々の裁量に任せられるから余計な労力を使い歪みも生まれ、人間関係の悪化を招いてしまうのです。

 

―情報共有について、どのように効率的になさっているのでしょうか。

 

全員が集う会議を残業なしでしっかり設けるのって難しいですよね。そこで取り入れたのは30分間の昼礼です。ここをいかに有効活用するか。30分となると、何をなぜやるのか内容をかなり精査します。クラス報告は1クラス1分。あとはできるだけ多くの時間を翌日の保育の具体的な話に使います(もちろん週案はあった上で)。保育で連携を取るためには、細かなところまで共通認識しておく必要があります。それがないから特有の「阿吽の呼吸」になり、その結果「合う」「合わない」が出てきてしまうのです。それではいけない。仕事なのだから「合わせる」ものです。他にも、現場で生まれた疑問って当事者やその直属の上司のみで解決させがちですが、そうではなく皆がいる中で相談も連絡も集約させるといいと思います。

 

―会議を持つにあたっての姿勢、大変参考になります。

 

あとは、食事時の談笑(コロナ禍なので控えめではありますが)も重要な話し合いの場です。思いを吐き出したり、意見交換をしたり、案を練りだしたりするのは食事の時間でしています。限られた会議の時間では重要な決定の部分だけを話し合うためです。また、事前に考えておいてね、これを読んでおいてね、などのアナウンスをLINEで流すなどし、工夫して随所に時間を作ることも、会議を濃い時間にする秘訣です。

 

―なるほど。では、時間管理についてもお伺いできますか?

 

保育現場って常に時間との闘いですよね。時間管理は要だと思います。それが行き届いていないと、皆が臨機応変に動きすぎ、時間に追われてしまう。「時間がない」と言われるけれど、物理的にはあるのです。いつも頭がいっぱいいっぱいだから時間に追われ、余裕がなくなります。大まかな時間割りこそあるものの、その時間ごとの保育士の動きのルーティンまではなかった。そのため判断の連続で、その時々違う動きをしてしまう。だから効率が良くないのです。子ども相手なのでもちろんイレギュラー対応はありますが、基本の時間枠・ルーティンはあるべきだと思います。

 

―保育に従事していて「時間が足りない」「日々の業務に忙殺されて」などの言葉がよく上がりますが、「時間管理が要」という概念に至っていなかった気がします。大枠を設定する必要は、時間管理に限ったことではないのでしょうね。

 

そうですね。様々な対応について、園の方針に沿ってマニュアル化しました。決まったルールがなく個人の考えや踏襲で対応してしまうから、そこにズレが生じ、保護者とのトラブルなどに繋がるのです。そして、決めたルールの責任は必ず上長がもつようにします。職員に主体性を、とよく謳われますが、まずは明確なルールがあり、上に責任を担ってもらってこそ、その先にある自主性だと思っています。

 

―ルールがあるからこそ安心して自分を発揮できるということですね。

 

はい、そしてそこに至るまで、初めは幾度も面談を重ねました。職員一人ひとり、何が不安で何に困っているのかということを明らかにしたのです。そこで抽出されたことを、今度の会議で持ち掛けようねという流れにしていました。

 

 

まずは疑問に思うところから。そして決してそれを「そういうものだよね」で片付けず、根本の原因を探る。そこで見出した課題や解決の糸口を他の問題にも汎用させていく。素晴らしい行動力と思考力だと感銘いたします。インタビュー後編では、坂東さんの想いを反映させた保育の中身についても伺っていきます。どうぞお楽しみに!

 

〈坂東さん×保育のひとコマ〉

  1. 自慢のおいしい手作り給食です。職員全員がお昼に給食をリクエストするほど「おいしい!」と評判。強制しているわけではないのですが、お弁当を持参する職員はひとりもいないとのこと。同じ釜の飯を食べる中で、先生たちの本音が聞けたり園全体のチーム力強化にも繋がっています。

 

坂東さんのTwitterはこちら Facebookはこちら

 

(2021.9 聞き手・編集:土屋)

 

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