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ほいくえVoice

【vol. 10後編】保育士であることを楽しむために

更新日:2021.6.14|2(2週間) / 236(累計)

kiyokoさん

40代 保育歴21年目

私立認可園 主任

 

kiyokoさんの前回のインタビューはこちら

 

−2園めの保育園に転職をした決め手はどんなところだったのでしょうか?

 

法定の配置基準は無理がある、だからうちの会社は余裕のある配置で保育ができる職場にしている、残業もなし、持ち帰り仕事もなし。企業からのメッセージは「働きやすさ」がウリでした。私も育児しながらフルタイム勤務希望だったので、そこが良いなと思いました。

 

−実際は違ったのですか?

 

年度途中で何人かの正規職員が辞めて、園長が本部に要望しても補充がされませんでした。コロナ禍の影響で地方から上京する保育士が減ったなど、採用が難しい事情はあったようです。本部からは「法定の配置基準でもできるように保育してくれないと困る。パートもいるんだから、それ以上の人員を求めるのは甘えだ。」とまで言われて。あれ、いきなり方向転換?と職員の中で不信感が広がった感じです。「努力しているけど、こういう状況で本部としても採用が大変なところなんだ。」というメッセージだったら、同じ状況だとしても過半数の正規職員が一斉退職、にはならなかったかもしれません。

 

−話が全然違いますよね、そんなことがあるとは…!

 

そもそも法定の配置基準に無理がある、私はそこから納得できません。保育者一人あたり0歳児3人、1歳児6人を保育するなんて無理な話です。保育者3人で1歳児15人を連れてお散歩に行くよう言われていましたが、それは不可能だし大通りを歩くのは本当に怖い。それ以上保育者を増やすのは許されない、それでも園庭がないからお散歩しなきゃいけない。法人、保育園、個人がいくら頑張ってみてもそもそも配置基準といった大枠のところで無理があることを、私たちはもっと訴えなければならないんですよね。

 

−楽しい戸外活動のはずのお散歩が怖い、となってしまうと子どもたちも安心して過ごせません。保育者も楽しめません。改善したいことは現場から声をあげること、大切ですよね。

インタビュー前編では「良い加減で純粋に、保育をもっと楽しんでほしい」というメッセージがありました。楽しむために必要なことってどんなことでしょう?

 

2つあると思っています。一つはどうして自分は保育士になったのか?を時々振り返ること。もう一つは「保育の基準」を自分の中で明確化することです。何があったら叱るのか、子どもの何に対して注意するのか。私はあまり叱らないほうだと思います。絵本を読み聞かせているときに集中しない子がいてもいいし、給食を完食できなくても食べられたところをポジティブに認めたい。「これだけ食べられたんだね、明日はもっと食べられるいいね!」と言ってあげたい。昼寝しない子を叱ろうとも思わないです。絶対に叱ろう、注意しようと決めているのは、自分や子どもたちの身に危険があると判断したときです。そういう基準があるとなんとなく叱る、注意しようか迷う、が減って保育がしやすくなると思います。

 

−自分自身のボーダーラインは大切ですね。複数担任だと、その基準は人それぞれではないでしょうか?

 

仰る通りです。保育観のすり合わせが一番大切で、かつ一番苦労するところです。クラスを運営する上ではとにかくコミュニケーション、ささいなことでもたくさん話すしかないと思います。「あのときA先生はこうしていたけど、私はこう思ったんだよねー」と気軽な感じでも言えるかどうか、普段からの会話が大切ですよね。

 

−話す時間がないとか、タイプが違う保育士との話し合いは気が進まない、という声も耳にしますが、その辺りの良いアイディアはありますか?

 

私は古い人間なので(笑)飲みニケーションに結構助けられました。あんなに怖いと思っていた先生が意外と優しい、嫌だと思っていた先生が実はいい人だったなど、外で食事して保育のこと、保育以外のことを話したら仕事がしやすくなることが多々ありました。

 

−飲みニケーション、私も大好きです!保育歴21年目のkiyokoさんが目指す保育士の姿とは?

 

何か技術を教えるって得意ではないですが、「保育は楽しいよ」っていうイズム、考え方をなんとか広めていきたいです。大抵のことは大したことないんです。「そんなこと大したことないから、大丈夫だから!」と言える人が若い保育者にも保護者にも必要だと思っていて。そんな存在に、おばあちゃんみたいな人でいたいですね。保育者も保護者も、みんな本当に一生懸命ですよね。

 

−おばあちゃんと自称するにはまだまだお若いkiyokoさんですが、なんでも受け容れてくれる優しさが溢れています。そんな姿に助けられてきた保育者、保護者もこれまでたくさんいたことでしょう。これからもたくさんの人に「大丈夫!」とエールを送ってほしいです。

 

【kiyokoさん×保育のひとコマ】

休みの日はひたすらビールです。今は飲みに行けないので残念ですが…。(kiyokoさん)

 

kiyokoさんが3園めの職場に選んだのは、0~2歳の小規模な保育園。これまで大規模園で勤務されていたkiyokoさんにとっては新しい環境です。最初の職場で一時保育室を担当していたご経験があり、「保護者とゆっくり話せる」環境でいつか働きたいと考えていたとのこと。保育者や保護者の不安をどうしたら安心、楽しさに変えられるのか。そんなことを常に考えている寛容で頼もしい方だと感じました。

kiyokoさん、この度は貴重なお話をありがとうございました!

(2021.4 聞き手・編集:鏡味)

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